PUBLICATIONS論文誌・刊行物

STEM教育研究 第3巻

2021-03-30 | PUBLICATIONS

「STEM教育研究」は第3巻の発行を迎えることができました。

第3巻では「STEM教育の実践と普及に向けた取り組み」というテーマで特集を組みました。
小学校から新学習指導要領がスタートし、これまで様々な環境で試行されてきたSTEM教育が、広く普及するフェーズに移行し始めています。

その中で実践者の分析や、他教科との関連、各国のSTEM教育への取り組みなど、多様な側面からの研究論文を広く投稿いただきました。
査読者および編集委員の協議の結果、5本の論文を採択し掲載しています。

第1巻の論文募集以来、毎年幅広いテーマで数多くの論文が投稿されてきました。
現在のパンデミックの状況下において、世界中の教育関係者が初めて直面する課題に取り組むため、これまで以上に研究、実践、ノウハウの共有が期待されます。

STEM教育学会では、今後も「STEM教育研究」の刊行と内容の充実を図ってまいりたいと考えております。
今後もより多くの研究者が投稿されることと、より多くの読者に活用していただくことを期待しております。

 

本誌に関するご意見、ご感想等は、お問い合わせフォームより受け付けています。

編集長 赤堀侃司(一般社団法人 ICT CONNECT21)
副編集長 中川一史(放送大学)
編集委員 安藤明伸(宮城教育大学)
編集委員 大谷忠(東京学芸大学)
編集委員 岡部恭幸(神戸大学大学院)
編集委員 門田和雄(宮城教育大学)
編集委員 中橋雄(武蔵大学)
編集委員 堀田博史(園田学園女子大学)
編集委員 益川弘如(聖心女子大学)

発行者: 日本STEM教育学会
発行地: 東京都新宿区

 

■目次
STEM教育研究 Vol.3 目次

 

■論文
米国ノーザン・アリゾナ大学におけるSTEM教員養成プログラムの概要
奥村 仁一

米国は実社会の課題を主体的,領域横断的に解決するSTEM 教育を推進する.米国のSTEM 教育を担う教員養成カリキュラムの日本での報告は少なく調査研究の意義は高い.今回ノーザン・アリゾナ大学の教育プログラムと受講条件等を調査した.参加した授業の学習活動を,日本の「大学生の学習実態調査」の項目と学生主導学習時間の割合に適用した.入門講座のリクルートメント・コースがプログラムへの本登録前に組まれ,学生は教員志望と適正を確認する機会を得た.本登録後カリキュラムで科学と数学の複数教員が領域横断的,実践的講座を段階的に進めた.授業は少人数対象の学生主導,能動的,探究的であった.多くの講座に授業実践実習が組まれ,三次元での学習(3D-Learning)に基づく「科学的かつ工学的実践」の授業案作成や技術活用があった.理論を教育現場で実証するエビデンス・ベースの実践的学習プログラムであった.

 

小学校教員免許取得希望大学生を対象としたSTEMリテラシー修得・指導方法の検討
-Society5.0の実現に向けた次代の科学技術イノベーションを牽引する人材育成に向けて-

杉本 剛

本研究は,STEM教育の実践を進展させるため,小学校教員を希望している大学生を対象にミニディベートを実施し,Society5.0の実現に向けたSTEMリテラシー修得に対する考え,STEMリテラシーを修得させるための指導方法についての案を調査することを目的とした。グループによるミニディベートを実施した結果,グループの結論は意見が割れ,個人の回答では,肯定,肯定・否定両論の意見が共存する結果が示された。個人による指導方法について調査した結果,次代の教育の中心を占めるSTEM教育の必要性・重要性を受け止め,指導方法について,未熟さや実効性に対する疑問はあるが,種々な工夫をすることに多くのアイデアを案出して考えることができることを示唆する結果が示された。Society5.0 の実現に向けた次代の科学技術イノベーションを牽引する人材育成に向けて,STEM教育の実践を進展させるため,次代の教員養成に力点を置いた人材育成の充実が望まれると考える。

 

AIスピーカーを活用した成績処理の自動化に関する研究
小川 裕也・中川 一史

校務の一つである成績処理の過程で行われる作業を短縮し,教育活動の質の向上を目指している。本研究では,成績を記載する台帳へのテストの点数の転記の方法について検討した。テストの採点には,正誤判定をして点数の計算をした後,表計算ソフトや校務支援ソフトに点数を転記するという作業がある。この採点作業の一部分をプログラムし,一連の採点作業システムを開発した。そのためにAIが搭載されているスピーカーを活用した。従来の成績処理の作業時間と本研究で設計したAIスピーカーを活用する成績処理の作業時間とを比較した。その結果,AIスピーカーを活用する成績処理の方法の作業時間が短縮されることが明らかになった。

 

中高生へのオンライン調査を通じたコロナ禍における学習の実態調査
宮 和樹・小村 俊平・芦野 恒輔・柄本 健太郎・北澤 武・住 谷徹・新井 健一・赤堀 侃司

新型コロナウイルス流行下において,日本の学校現場は休校,分散登校,オンライン授業などこれまでと全く異なる状況を経験した。このような環境下での生徒や教員,学校の取り組みを共有・記録するため,「コロナ禍における『生徒の気づきと学びを最大化する』プロジェクト」を発足し,「学びの個別最適化」と「学びのSTEAM化」との関係を明らかにするために中高生を対象としたオンライン学習調査を実施した。その結果,休校下においても多くの生徒は個々に多様な学びをした一方,強いストレスを感じている生徒もいたことが明らかになった。また,コロナ収束後もオンライン学習を含んだ学習形態を望む生徒が約40%に上ることも明らかになった。さらに,オンライン学習に取り組んだ生徒の声から,「学びの個別最適化」が起きていることも示唆された。

 

ロボットプログラミングの遠隔教育について
Caoduc Hoan・端倉 弘太郎・Md Abdus Samad Kamal・山田 功

本研究では,ロボットプログラミングの遠隔教育について検討する。プログラミング教育は,2013年6月に成長戦略として「日本再興戦略―Japan is BACK-」を閣議決定されてから,重要な課題となった。IT教育の機会均等を図るには,プログラミングの遠隔教育が有効であると考えられる。さらに,COVID-19の影響で,集団教育を極力回避せざるを得ない現在の状況でも,遠隔教育の有効性が期待できる。しかしながら,プログラミングを視覚的に確認できるロボットプログラミングを遠隔教育するのは,対面教育を行ったときの教育効果を維持することを考えたとき,それほど簡単でない。本研究の目的は,遠隔でロボットプログラミング教育を行う効果的な2つの遠隔教育方法を提案することであり,実証実験結果とアンケート法を用いて,その有用性を検証する。