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日本STEM教育学会 拡大研究会 一般研究発表予稿

2019-03-09 | EVENTS / ACTIVITIES

2019年3月10日(日)開催の「日本STEM教育学会 2019年3月拡大研究会」の一般研究発表の予稿を掲載いたします。

 
一般研究発表[1]

R01. 疑似体験と学校放送番組の視聴で構成するSNSに関するメディア・リテラシー学習単元の設計と評価
山口眞希(金沢市立大徳小学校・放送大学)、中川一史(放送大学)

SNSに関するメディア・リテラシーを身につけることをねらいとし、学校放送番組の視聴と教育用SNSでの疑似体験を取り入れた単元を設計した。教育用SNS「とりりん★チャット」を使った匿名での疑似体験では、教師が意図的に「なりすまし投稿」や「不快な投稿」を行い、それらの投稿に対する捉え方について話し合った。単元終了後に実施したテスト・自由記述による質問紙調査の結果から、SNSの特性についての理解や、適切な対応をしようとする意欲が向上したことが分かった。

 

一般研究発表[2]

R03. 自己形成を基盤としたSTEAM教育の可能性について
清田奈那、前田明優名(お茶の水女子大学附属高校・高校生)、朝倉彬、北原武(お茶の水女子大学附属高校)、下郡啓夫(函館工業高等専門学校)

今後、異質な集団で交わりながら、問題解決をしていくことが求められる。本研究では、現在の教育の在り方について見直しを図る場合、自己形成を基盤として考える必要があると考えた。さらに自己形成の過程で獲得される、自己・他者理解及び自己肯定感を拠り所にしたSTEAM教育の実践が、新たな時代を生きる上で求められる創造性や問題解決能力の育成に繋がると考えた。そのようなSTEAM教育の可能性について、本校の探究の時間を通じて検討した内容を報告する。

R04. 退職前校長最後のチャレンジ ~ゼロから始めるプログラミング教育~
山部英之、平本友美、古田直也、山村文彦、清水誠一(井原市立出部小学校)、浅野雄一(岡山県総合教育センター)

2020年度からプログラミング教育が小学校において必修化されることとなったが,本校においては2018年11月末までプログラミング教育についての職員研修も未実施の状況であった。このような現状に危機感を感じ,「今やらねばいつできる わしがやらねば だれがやる」と決意を新たにして,本校におけるプログラミング教育研修,公開授業(1年と6年),次年度教育課程への位置づけ,年間指導計画作成,市内小中学校への情報提供等にチャレンジした。このことにより,プログラミング教育の取組に消極的であった本校教職員の意識も改善されてきた。次年度以降の取組に期待したい。

R05. 遠隔授業における効果的ICT環境
中村めぐみ(つくば市総合教育研究所)、中川一史(放送大学)

つくば市は、テレビ会議システムを活用したプログラミング学習を以前から進めているが,実際の授業と比べると,授業の意図や目的,ねらいなどが十分に伝わらない。また,画面からの一方的な伝達が主になってしまい,児童とのインタラクティブなやりとりが難しい。そこで,遠隔授業システムを構築する際に,授業内容がより伝わりやすい画面の活用の仕方と,インタラクティブになる環境作りについて追究することとした。

 

一般研究発表[3]

R06. 小学校プログラミング教育におけるフローチャートづくりとICT活用に関する考察
清水匠(茨城大学教育学部附属小学校)、中川一史(放送大学)

第6学年算数科「形の同じ図形」において,根拠をもって図形を見分ける手順を整理するため,順序・分岐の考え方を用いてフローチャートに可視化する学習を行った。ここでは,タブレット上でフローチャートをつくった。それにより,ICTの特性である即時性が生かされ,後から簡単に行程を加えたり,大きく分岐を移動させたりすることが可能となった。自分達の考えを表す最適なフローチャートになるよう,何度も修正しながら考えを深めていく姿が見られた。

R07. 映像制作におけるNHK放送番組の活用の効果
反田任(同志社中学校・高等学校)、小林祐紀(茨城大学)・中川一史(放送大学)

学校紹介動画の制作を行う過程でNHK放送番組を活用し、学習者が自分自身で制作した動画をレビューし、同じ素材を用いて学校紹介が効果的に伝わる動画に仕上げる課題を実施した。動画を修正する過程において(1)学習者が放送番組の中で意識したキーワード、(2)放送番組視聴後に変更した動画の中の要素について調査し、放送番組を自己調整学習の一つとして授業デザインの中に位置づける可能性について追究する。

R08. 国際理解へ繋げるSTEM教育の展開〜Asia STEAM Camp / Robo STEAMを中心として〜
沼田和也(同志社中学校)

筆者は、STEM教育、ロボットプログラミングを真ん中においた教育実践を国際的に展開してきた。アジア諸国を中心にしてネットワークを構築してきた結果、Asia STEAM Campというイベントを立ち上げるに至った。国際理解へ繋げるSTEM教育とは何かを考えるとき、その教材が持つ意味は大きいと考える。これまでの教育実践を紹介する中で、教材の考察を試みる。

R09. 小学校プログラミング教育を継続して実践している教員が認識している成果と授業設計の視点
小林祐紀(茨城大学)、中川一史(放送大学)

本研究の目的は,小学校プログラミング教育を継続的に取り組んでいる教員が認識している成果及び授業設計の視点を明らかにすることである。小学校プログラミング教育を1年以上継続的に取り組んでいる教員2名を対象者として、半構造化インタビューを実施した。得られたデータを質的研究の手法を用いて分析した結果,成果については7つのカテゴリー,授業設計の視点については8つのカテゴリーが導出された。

 

一般研究発表[4]

R10. Isabelle/HOLを用いたユークリッド原論の定理証明
岩間詞也、高橋正(甲南大学)

ソフトウェアを用いて数学の定理の証明を行うことについては、多くのソフトウェアが開発されている。このような研究は、自動定理証明と呼ばれている。定理証明ソフトIsabelle/HOLを用いて、ユークリッド原論の第一巻の定理1~48の証明を行い、次の段階として、原論の第二巻以降の定理証明を行なっている。この研究を知能情報学における研究と位置づけ、数学教育に成果を応用することを目指す。

R11. GeoGebraの証明機能について
高橋正、篠田有史(甲南大学)

GeoGebraは、DGS(Dynamic Geometric Software)の一つであり、オープンソースの数学ソフトウェアである。近年、GeoGebraは証明機能を有し、学校数学における図形の証明が可能になった。しかし、その証明機能ではオブジェクト間の設定などの要因があり、証明機能を効果的に使えない状況である。本発表では、現状でのGeoGebraの証明機能の制約を分析し、今後の可能性を考察する。

R12. 小学校4年における理科と総合的な学習を連携させたプログラミング教育の単元開発
菊地寛(浜松市立雄踏小学校)、遠山紗矢香(静岡大学)、中川一史(放送大学)

本研究では、理科と総合的な学習を連携させたプログラミング教育の単元開発について検討する。質問紙調査の分析の結果、プログラミングに興味をもち、自力でプログラミングできるようになったと肯定的に受け止める児童が多かった。これは、理科において、自分たちの力で衝突回避モーターカーをプログラミングし、それを総合的な学習で活かすことができるような横断的な単元を開発したからだと示唆される。

R13. 超準解析の世界観を動画で表現する試み
高木和久(高知工業高等専門学校)

微分積分の授業は、ともすると公式を覚えて計算のスキルを高めるだけの退屈な授業になりがちである。微分積分が誕生した頃には無限小という概念が盛んに用いられ、直感的な議論の中で様々な定理や公式が発見されていった。微分積分において深い学びを実現するためには、17世紀に行われていた直感的な理解を復活させることが必要である。
本研究では、無限小超実数や無限大超実数をビジュアルに表現する動画を作成し、高校生が微分や無限小といった概念を直感的に理解できるようにした。