2018-10-12 | EVENTS / ACTIVITIES
2018年10月13日(土)開催の「日本STEM教育学会 第1回年次大会」の一般研究発表の予稿を掲載いたします。
■一般研究発表
・プログラミング教育のカリキュラム
・小学校の教科におけるSTEM教育実践
・中学校・高等学校におけるSTEM教育
・STEM教育の考え方
■協賛企業発表(予稿はありません)
・アドビ システムズ 株式会社
・株式会社 ベネッセコーポレーション
■高校生ポスターセッション(予稿はありません)
・郁文館グローバル高等学校
・西武学園文理高等学校
・豊島岡女子学園高等学校
・広尾学園高等学校
■一般研究発表「プログラミング教育のカリキュラム」 4階大会議室
R01. 小学校プログラミング教育におけるプログラミング的思考「条件分岐」の類型の整理
清水 匠(茨城大学教育学部附属小学校)、中川 一史(放送大学)
小学校プログラミング教育で育成を目指すプログラミング的思考において、どのように子ども達に理解させていくのか、明らかにされていない。そこで、「条件分岐」を取り上げて、子ども達がどのように捉えていくのか、類型を整理した。順次の考え方から条件分岐へと段階的に触れていけるよう単元構成を工夫し、条件分岐の考え方を使う必然性のある文脈に留意した授業展開を行った結果、子ども達が活用した条件分岐の考え方には、「完了」「時間」「確認」の大きく3種類の類型があることが明らかになった。
R02. 小学校第1学年におけるプログラミング教育導入時のカリキュラム開発に関する一考察
中村 めぐみ(つくば市教育委員会)、中川 一史(放送大学)
文部科学省は、新学習指導要領公示の中で、2020年度からの小学校におけるプログラミング教育必修化を示している。しかし、その導入の仕方については、具体的に示されておらず自治体や学校の実態にゆだねられている。教科としての位置付けではないことから、現在の教育課程の中にどのように導入していったら良いのかを考え工夫しなければならない。そこで、本研究では、義務教育最初の小学校第1学年を対象として、プログラミング教育導入のためのカリキュラムマネジメントを行った。そして、プログラミング的思考を効果的かつ効率的に育成していくには、段階に応じた順序性があることがわかった。
R03. 系統的学習を考慮した小学校プログラミング教育用教材の試作
太田 剛(千葉県立袖ケ浦高等学校 / 千葉県立市川南高等学校 / 教育テスト研究センター)
2020年度から始まる小学校のプログラミング教育は、発達段階に応じて各教科の中で実施することが示された。これに対して授業実践など始まっているが、単発の実践例は多いが、各学年を通じた系統的な実践は少ない。これに対して本稿では、授業でのプログラミングの位置づけを明確に定義するとともに、Scratchプログラミングの発達段階を考慮した教材プログラムを試作した。そして今後の授業や教材の設計の指針となるような、学校現場で実現性の高い系統的なプログラミング教育のカリキュラム案を提案するものである。
R04. クリエイティブラーニングとしてのプログラミング教育:課題と可能性
村井 裕実子(マサチューセッツ工科大学)、村松 浩幸、五味 夏海、桂本 憲一(信州大学)
この発表では、今年の4月から8月にかけて行われた、信州(長野県)のプログラミング学習のための教員研修「信州デザインフェロープログラム」について紹介する。14人の信州各地の小中学校の先生たちが、プログラミングを通して学び取るべきとされる「プログラミング的思考」を「クリエイティブ思考」として捉え直し、なぜ今プログラミング学習が必要なのか、どのように教室に導入できるのか、実践を通して考えた。
■一般研究発表「小学校の教科におけるSTEM教育実践」 2階講堂 会場A
R05. フォトポエム創作活動における児童の学びに関する一考察
石田 年保(松山市立椿小学校)、佐藤 幸江(金沢星稜大学)、中川 一史(放送大学)
本研究は、写真と詩を組み合わせたフォトポエムの創作活動において、どのような学習内容や学習場面を印象深く振り返っているのか、その一端を明らかにすることを目的としている。小学生3〜6年生児童156名のフォトポエムの学習の振り返りの自由記述を計量的テキスト分析した。その結果、創作中の思考の場面が学びの要衝となっていることや、詩の創作中に感じた難しさと詩の出来映えの満足度に強い共起関係があることが明らかとなった。
R06. 小学校第2学年図画工作科におけるプログラミング教育の実践と評価
増子 知美(淡路市立津名東小学校)、小林 祐紀(茨城大学)、中川 一史(放送大学)
本研究の目的は、小学校第2学年図画工作科においてプログラミングを学習活動として取り入れた授業を考案・実践し、評価することである。小学校の第2学年(児童数25名)を対象に、図画工作「にぎにぎねんどでお話づくり」を考案し、第一筆者が授業者として実施した。授業後に授業内容に関する児童の自己評価(4件法)を実施し、授業のねらいの達成具合を確認し、授業の前後に児童のコンピュータやプログラミングに対する意識調査(8項目)を実施した。結果、学習目標の達成と共に、興味・関心や難しさに関する意識、プログラミングの他へ有用性への気付き、社会で使われているコンピュータへの理解といった項目で意識変化が確認できた。
R07. 小学校外国語・外国語活動導入におけるICTを活用した発音の評価に関する考察
河村 康彦(東久留米市立第十小学校)、中川 一史(放送大学)
次期小学校学習指導要領の全面実施に向けて移行措置が始まっている。外国語活動・外国語では、英語の正しい発音の指導が課題の一つある。教員が正しい発音ができないと、児童の発音を指導、評価が難しい。発音の指導に文部科学省の映像番組、その評価として翻訳サイトを活用する。ICTを活用した習得の過程で、児童が英語の基本的な英語の発音の区別できるようになることを論じた。
R08. AIスピーカーを活用して繰り返し英会話を練習する短時間学習の設計
小川 裕也(柏市立柏第三小学校)、中川 一史(放送大学)
近年、海外在留邦人数や訪日外国人数が過去最高に達したことからも外国語教育の必要性が高まっていると分かる。新学習指導要領では外国語科が新設され、小学校でも準備を進めている。ただ英語を話す時、間違った発音・アクセントではないか、自分の英語が伝わるかなどと不安になり、人前で話すことを恥ずかしいと感じる児童がいる。筆者の学級でも一定の割合で、人前で英語を使うのは恥ずかしいと感じる児童がいる。英語でのコミュニケーション能力を育むための教具の1つとして、AIスピーカー(スマートスピーカー)を取り上げる。英語を話すことに自信のない児童のために気軽に行える実践を紹介したい。
■一般研究発表「中学校・高等学校におけるSTEM教育」 2階講堂 会場B
R09. 中学校国語科でのプログラミング ~プログラミングで表現力を拡張する~
二田 貴広(奈良女子大学附属中等教育学校)
2020年度から「プログラミング的思考」の獲得や向上を目指した学びが小学校の各教科の学びで全面展開される。しかしその学びは、中学校では技術家庭科のほんの一部の単元に引き継がれるだけで断絶が生じる。Society5.0といわれる世界で生きるために、「プログラミング的思考」などの「生きる力」を育成するならば、中学校の各教科での学びと小学校での学びを接続した学習単元を開発する必要がある。本実践研究では、以上の課題意識に基づき中学校国語科の単元を開発した。
R10. ものづくりで育むスキルについての一考察
岩崎 有朋(岩美町立岩美中学校)、中川 一史(放送大学)
中学校理科の授業において、段ボールと凸レンズを組み合わせたプロジェクターづくりの授業を行った。実験を通してレンズの特性を理解し、タブレット端末の画面を模造紙大に拡大する手作りプロジェクターを作成した。その後、生徒は、自分たちで新しいものを作るときに必要なスキルについて文章表現で複数挙げた。それらを分類し、学習者自身がものづくりを通してどのようなスキルを必要としているのかが明らかになった。
R11. 高等学校情報科「情報Ⅰ」に向けたプログラミング教育
池田 明(大阪市立東高等学校)
高等学校の情報科の科目編成の変更にともなって、プログラミング、ネットワーク、データベース等の内容が必修化される。中でもプログラミング教育が大きな柱として位置付けられることが特徴である。そんな中で、現行の情報科科目「社会と情報」の指導において、先行的にプログラミング実習を取り入れて試行実践した。この実践内容から、情報科の新たな科目「情報Ⅰ」におけるプログラミング教育に向けての展望と課題を考察する。
R12. 「数学の動画×プログラミング」という新たな可能性について
高木 和久(高知工業高等専門学校)
本発表ではプログラミングを取り入れた数学の授業について報告する。この授業では学生は一人一台ずつiPad miniを利用し、教員が作成した動画を再生させて学習してゆく。更に、プログラム入力欄を持つアプリを提供して、学生が数行のプログラムを入力することにより、動画で見たプログラムを自分でも実行してみることができるようにした。
■一般研究発表「STEM教育の考え方(1)」 2階講堂 会場C
R13. 直観的な学習を目的とした水中ロボット教材のロボットコンテストにおける効果検証
山縣 広和(東京大学)、巻 俊宏(東京大学)
筆者らは、力のつり合いを検討しなければ動作しない水中ロボットに着目し、これをSTEM学習の教材として用いた教育活動とその効果の検証をロボットコンテストによって3年間実施してきた。本発表では、ロボットコンテスト内で行われたアンケートによる成果と大会期間中における参加者の機体改造方法の変遷に対して、混合アプローチを行うことによって得られた教育効果に対する検証結果について報告する。
R14. STEM教育を重視した台湾北部の自造者教育
門田 和雄(宮城教育大学)
台湾の小中高では、STEM教育の観点を重視して、3Dプリンタやレーザー加工機などのデジタルファブリケーション機材を積極的に活用した自造者教育が急速に普及しつつある。本研究では新北市立永和国民中学の訪問調査に基づき、国民中学における教科「生活科技」の取り組みをまとめる。また、自造者教育の拠点である新北市及び宜蘭市の自造者教育センターの訪問調査に基づき、STEM教育を重視した台湾北部の自造者教育の動向をまとめる。
R15. STEAM教育におけるアートの可能性の一考察
下郡 啓夫(函館工業高等専門学校)、有賀 三夏(東北芸術工科大学)、中島 徹(株式会社 学研プラス)
有賀のArtに関する実践をH.Gardnerの多重知能理論の観点から分析し、芸術が8つの多重知能の活性化を促す可能性があることが分かった。また分析結果から、H.Gardnerの創造性、D.A.ノーマンのダブルダイヤモンド・デザインプロセスモデルを考慮に入れた、STEAM教育の1つのモデルを提案する。
R16. STEM教育を活用したSDGs志向の地域づくり
鈴木 秀顕(東京国際ビジネスカレッジ)
地域づくりにおいて人口減少や少子高齢化問題が取り沙汰されている。しかしながら、それらの問題への対処についてはいまだ解決への道半ばにいる状態である。一方、これら課題に対する道標として2015年にSDGsが採択された。そこには持続可能性の考え方がある。そして、そのための方策として地域づくりに対する根本的なあり方やその進め方としての教育の在り方について、STEM教育を中心とした考えが提唱されている。その関係性を明らかにするとともに、活用した時の地域づくりの方法や効果を考察する。
■一般研究発表「STEM教育の考え方(2)」・協賛企業発表 2階講堂 会場D
R17. 失敗から学びを得るSTEAM教育の実践事例
西澤 利治(株式会社 電脳商会)
本発表は、「失敗」を「間違い」として切り捨てるのでなく、学習者が「失敗」から学びを得る手法の確立を目標として、ソーシャルメディアでMaker層に対するヒアリングを実施して電子工作の失敗をパターン化し、そこから学習者が「動かない電子工作」は何が原因なのかを自己分析し、あるいは「動く電子工作」になるようにするチェックシートを開発して、これをワークショップで試用した実践報告である。
C01. 未来につながる創造的問題解決能力を育む教育
アドビ システムズ 株式会社(協賛企業発表)
弊社では2017年10月に「学校現場における『創造的問題解決能力』育成に関するグローバル調査を行いました(実施国:米国・英国・ドイツ・日本)。過去2年間に実施の創造性に関するグローバル調査の結果も交えながら、本調査の結果についてご報告いたします。
C02. プログラミング教材ロボット「プロロ」
「プロロ」とは、手のひらサイズの2輪駆動ロボットです。パソコンやタブレット上のブロック型言語で制作されたプログラムで「プロロ」は動きます。開発コンセプトは、①機敏な動き、②机から落ちても壊れない、③組立なしですぐに使える、です。限られた授業時間の中で高い学習成果が得られ、かつ教材としての信頼性を重視しました。また「プロロ」の最大の特徴は「ロボット相撲」ができることです。「プロロ」を使えば、子どもたちが作ったプログラムでロボット相撲ができます。勝つことの達成感は子どもたちの自信となり、負けた時の悔しさが原動力になってさらなる創意工夫が生まれ、そういう積み重ねが、学びの継続性を生むことが可能です。
C03. 情報教育における汎用的資質・能力を測定するアセスメント開発
株式会社 ベネッセコーポレーション(協賛企業発表)
新しい時代に必要となる資質・能力の育成に向けてどのように対応していくか。弊社では、資質・能力を育成する教材と、汎用的資質・能力を評価するアセスメントの開発を進めています。今回は、特に小学生のプログラミング体験教材から見えてきた傾向や、小中高大を一気通貫する情報教育の評価基準の作成と測定アセスメントの開発について報告いたします。
■高校生ポスター発表(50音順) 2階講堂
・池田 優奈、加地 登輝、佐藤 碧海、高柳 凜太郎(郁文館グローバル高等学校)
・黒木 悠飛、高橋 佑太、荻野 遼太郎(西武学園文理高等学校)
・佐藤 美彩希、竹内 海羽、南沢 のどか、深田 彩愛、松下 越子(豊島岡女子学園高等学校)
・村田 有生喜(広尾学園高等学校)
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